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【法律のお話】テレワーク(在宅勤務)の場合の労務管理方法

緊急事態宣言でテレワークが増加中

2021年があけて間もないですが、昨年(2020年)に続き2回目の緊急事態宣言が発せられました。
管理人の印象としても2020年春ごろからテレワークを導入する企業が増えているようです(Webカメラが品薄とか話題になていましたね)。
今回、国からは出勤者をテレワークによって7割削減という目標も掲げられるなど、これまで以上にテレワークの需要は高まりそうです。

では、社員が事業場での仕事ではなく、いわゆるテレワークであった場合の労務管理とはどのようなものになるのでしょうか。

テレワーク(在宅勤務)とは?

「テレワーク」とは時間や場所にとらわれない働き方の形ですが、ここでは「在宅勤務」と同義で扱い、「自宅で仕事をすること」とします。
カラオケ店などでもテレワーク向けに部屋を貸し出したりしていますが、「テレワーク」や「在宅勤務」として自宅以外を仕事場所として認めているかどうかは会社によりますので注意してください。

労務管理方法の違いは?

実は社員が事業場で働こうが、自宅で働こうが、労務管理の方法にほぼ違いはありません。
テレワークを導入していなかったときは事業場へ出勤して働くこととされていたものが、テレワーク導入によって「自宅での仕事もOK」となった程度の話です(※注)。
同時に、テレワーク導入に合わせて勤務時間(始業、終業の時刻)や休憩時間の取り方などは幅を持たせて自由度を高め、テレワークを行う社員自身が(その幅の中で)自由に選択できるようにするといった緩和(就業規則の変更)も行われる場合が多いようです。
(ただし、午後10時から翌日の午前5時までの間は深夜業の割増賃金が発生するので、この時間帯は認めていない会社が多いかと思います)

※注
自宅での仕事を可能とするための仕組み作りはまた別の話で、これは結構大変だと思います。代表的なものではいわゆるリモート接続で自宅に居ながら会社のパソコンを操作できるようにしたり、自宅のパソコンからオンラインミーティングに参加できるようにしたりなどです。言葉では簡単ですがセキュリティなども考えると結構頭が痛くなります。

会社側はテレワークの労務管理を営業職と同じにするとラク?

『「自宅での仕事もOK」となった程度の話』といっても、事業場なら上司や同僚の目にとまるけど、自宅にいたらいつ仕事をしてるかはわかりません。
この辺りをどう解決するかは会社によりけりではありますが、例えば常にオンラインミーティングに参加したままにさせてずーっとカメラで監視し続ける……なんていうのは現実的ではありません。監視する上司にも仕事がありますし、会社側が社員の自宅の様子を見続けるのも問題でしょう。

そこで、おそらく多くの会社が採用するのではないかと思うのが「事業場外労働のみなし労働時間制」(以下、みなし労働時間制)です。
これはよく営業職の社員に適用されているもので、事業場外での仕事のためにその労働時間を把握することが困難な場合は所定労働時間を労働したものとみなすことがでるというものです。
(逆に言えば事業場外の仕事であっても労働時間の把握ができる場合はみなし労働時間制を適用できず、実際に働いた時間が労働時間となります)

このみなし労働時間制はテレワークにも適用することができます。
これによって会社としてはテレワークをしている社員の労働時間の管理がぐっと楽になりますが、前述の通り会社はテレワークをしている社員の労働時間を把握していない(把握できない)ことが条件となります。
先ほど「テレワークの導入に合わせて勤務時間に自由度を持たせる」という話をしましたが、これが大事で会社は「テレワークの社員がいつ仕事をしているか分からないし、具体的な指示もしない」ことがポイントです。

例えば上司からテレワークの社員へ午前10時にメールや電話などの手段で連絡を取り、「この仕事を今日の午後3時までにやっといて」と指示したりすると、当該テレワークの社員に対してみなし労働時間制を適用することはできなくなる可能性があります。
その上司が、午前10時に連絡を取った際にテレワーク社員にすぐに対応させたこと、さらにその連絡内容として「今これから具体的にこの仕事して」と指示したこと。これらはその上司がテレワーク社員の仕事の時間帯や内容を把握したことになるからです。
特定の時刻に連絡を取ろうとしたこと自体は問題ありませんが、「その時刻に連絡内容への対応が可能な状態であること」や「その時間帯に行う具体的な作業の指示」などはNGとなりうるので注意が必要です。
会社や上司は連絡を取る際に「今日はもう連絡への応答はないかもしれないし、なくてもかまわない。仕事の指示も(ある程度の期限はあるが)概要であって、具体的で詳細な作業指示はしない」ことが肝要でしょう。

社員側は一見自由なテレワークでもリスクはある

このようにみなし労働時間制が適用されている社員は、自分の自由な裁量で仕事を進められるメリットがあります。
しかし、ある日は仕事がはかどらずに労働時間が10時間に達してしまった、というようなこともあるかもしれません。もちろんこの場合でもみなし労働時間制が適用されているなら労働時間は所定労働時間(8時間の場合が多いかと思います)となり、残業はしていない扱いになります。
残業していない扱いなので残業手当もありません。

法律は、形式や手続きなどよりも実態はどうなのかを重視します(違う場合もありますが)。
そのため、明らかに所定労働時間内に完了させることが不可能な仕事量であれば、手続き上は適切だとしてもみなし労働時間制の適用は不当とされます(その「不可能」を客観的な基準で証明するのもまた難しかったりするのですが)。
もしも、みなし労働時間制を適用されているけれども明らかに労働時間が長くなりすぎるという状況の方は、一度きちんと上司に相談してみましょう。

会社側も社員側もバランスを取って

…などといってもこのバランスが難しいのが実情ですね。
みなし労働時間制は裁量労働制と同じく難しい点を含んでいますし、テレワークは事業場での業務に比べて生産性が低下する場合も少なくないと思います(逆もあるでしょうけど)。
一方でテレワークには通勤時間をなくすことができたり、密になりがちな公共交通機関の利用を減らしたりとメリットも多いです。
だからこそ労使間でバランスを取ることで業務の生産性を保ち(又は上げ)、働きやすい環境にしていくことができるはずだと思います。

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