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【法律のお話】始業時間より早く来い!?意外と知らない労働時間とは?

 

労働時間ってどういう時間?

労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。

この「労働時間」に関する問題は幅広くいろいろなケースがありますが、今回は管理人がかつて受けたお二方のケースをご紹介します。

※実話ではありますが、内容を損なわない程度に脚色してあります。

なお、上記の「労働者」や「使用者」というワードは法律上きちんと定義がありますが、「使用者」というワードは一般にはあまり聞き慣れないものかもしれません。

「使用者」の意味が解らない場合、ここでは「社長」や「上司」、「管理者」といった意味だと思って読み進めてください(当サイト特有のゆるい解釈)。

ケース1:アルバイトAさんの場合

Aさんは、ある小売店でアルバイトとして働いています。
ご相談の内容は次のようなものでした。

店長からはシフトの時間よりも15分前には出勤して、着替えなどの(フロアに出る)準備を済ませておくように言われています。そのため、指示通りシフトの時間よりも早くお店に行かなければならないのですが、この時間は時給に加算されません。これっておかしくないですか?早く出勤した時間分も時給に加えてほしいのですが…。
店長から指示された15分の早出は労働時間と見なされる可能性が高いです。

例えば、業務との直接の関連性がなく、公共交通機関の遅れなどで出勤時刻に遅刻しないようにするために早い時刻に職場に到着するようにしているような場合は、契約された始業時刻前の時間は労働時間とはみなされません。

しかし、ご相談のケースではAさんに対して「店長から」「仕事の準備のために」「(本来の時刻よりも)15分早く出勤するように」とお達しがあるため、当該時間は労働時間とみなされる可能性が高いと思われます。
「可能性が高い」という表現に留まるのは、このお店の「店長」が「使用者」に該当するかどうかについて判然としない(強制の程度が不明)ためです。ただ、Aさんのお話を伺った限りでは、このケースでは「店長」は「使用者」に該当しそうだとは感じました(世間には「名ばかり店長」という問題もあってややこしいのです)。

ケース2:正社員Bさんの場合

Bさんは、あるIT系中小企業で正社員として働いています。
始業の時刻は午前9時だそうです。社員はみな午前9時に間に合うように出勤してタイムカードを押しますが、午前9時前の時間は労働時間にカウントしない決まりだそうです(例えば午前8時55分にタイムカードを押しても労働時間は午前9時からのカウントになる)。
そのご相談の内容は次のようなものでした。

うちの会社は毎朝朝礼があるのですが、先日の朝礼で突然社長が「労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下にある状態だから、社員は(午前)9時よりも早く出勤して仕事の準備をし、(午前)9時には仕事を開始できるようにしなければならない」と言っていたのですが、そうなのでしょうか?ちょっと意味が違うように思うのですが?
ご指摘の通り、社長さんは言葉の意味を勘違いしているようです。業務の準備のために午前9時前の出勤を要求するなら、その時間も労働時間としてカウントしなければなりません。

お気づきの方も多いと思いますが、この問題の本質は前述のAさんのケースと同じです。
ただ、困ったことに社長さんご自身が労働時間の定義を正しく発言しているにもかかわらず、その意味を誤解されているので、社員がその間違いを指摘するのは大変ハードルが高いことのように思います。

ちなみに、詳しい経緯は存じませんが、その後社長さんの誤解は解消し、社員は午前9時までに出勤すれば問題ないことが確認されたようです。
しかも、もともとほとんどの社員さんが始業時刻に遅れないように出勤していたので、職場の様子自体は件の社長さんの発言の前後で何も変化がなかったそうです。

もともとトラブルもなかったのなら、そもそも社長さんは「労働時間とは~」なんて話を持ち出す必要もなかったはずです。
単に社長さんが「労働時間とは~」という朝礼ネタを新しく仕入れたので、朝礼の場で言ってみたかっただけなのかもしれませんが、その意味は正しく認識していただきたいものです(でないと部下が困ってしまいますから)。

他にもいろいろなケースが

例えば、形式上はお昼休み時間(つまり休憩時間)であっても、来客や電話があった際には対応しなければならないとされている職場の場合、それは休憩時間ではなく労働時間とされる場合があります。
これは、たとえ食事中であっても、同時に来客や電話に対して待機し続けている状態だからです(休憩時間とは、労働者が労働から離れることが保障されていなければならないとされています)。
また、当該時間が労働時間であった場合、当然ながら休憩時間は別途与える必要があります。

ただ、特に小規模の事業場などでは、労働時間と休憩時間の峻別は困難な場合があるのも確かなので、上記のようなケースが必ずしも不法であるとは言い切れません。
頑なに権利を主張するのではなく、労使双方の歩み寄りで働きやすい職場環境の構築に協力することが肝要かと思います。

他にも労働時間関係としては、36協定(特別条項付き含む)や法41条該当者あたりは簡単なようでも、実際にはきちんと理解されていない場合もあるようです。
この辺りも機会があればお話したいと思います。

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